のりとはさみ

サッカーや本が好きな大学生の日記です。

現時点でのオンライン授業に対する評価

はじめに

大学のオンライン授業がスタートしてから約1か月が経とうとしている。なんか文章を書こうと思っていたので、とりあえず現時点でのオンライン授業に対する個人的な評価をしようと思う。

これを読んでいる好事家の貴方へ。この文章は一文系大学生による現時点でのオンライン授業評であり、その目的は大学の授業に対してこれまで抱いていた私の感情をメモしておくことであります。純度100%個人の見解なので納得できる部分・納得できない部分があるはずですが、だいたい真剣に書くので大目に見てください。

 

 

ことしの前期は殆どの大学生にとって、また多くの大学にとって未曽有の事態だけれど、何とかこの授業形態にも馴れた頃だろう。4月、緊急事態宣言が発令されて以降、大学各校が相次いで対面授業からオンライン授業への転換を発表したときの学生の反応を思い返すと、好意的なものはそれほど多くなかったはずだ。私が目にしたのは、

「仕方ない」「早起きしなくて済むのはラッキー」「友人と会えないのは寂しい」「新入生はそもそも友人をつくれなくなる」「筆記試験もなくなるのではないか」「ん、新歓は?」「全員に単位配布はよ」「設備を利用できないのは学費の払い損だ」「学費を返上しろ」「授業ずっと延期してくれてていい」

ざっとこんな感じで、オンライン授業を肯定的にとらえる学生はさほど多くなかったと思う。これらの反応を踏まえて、現時点でのオンライン授業についてのプロコンを簡単に書きだしてみる。

 

オンライン授業 Pros and Cons

Pros

1、通学時間の消滅

真っ先に挙がるのはこれでしょう。毎日満員電車に揺られて登下校することがいかに大きなストレスであったかをみんな痛感したはず。この生活を味わってからというのも、対面授業の復活を素直に喜べなくなった。人によっては起床時刻が数時間遅くなったと思う。睡眠万歳。

 

2、気楽で多様な受講スタイル

教室で受講するときは当然他人の目線があるし机と席は限られているし講義中にラーメンを食べることは倫理的に難しいが、オンライン授業ではだらしない恰好で寝そべってラーメンを食べながらでも講義を受けられる。パソコンでリアルタイムの講義を視聴しながら、分からない言葉をスマホで調べたり、LINEなんかで友人と会話したりできる。

 

3、授業への参加状況の改善

これは科目にもよる。やっぱりオンラインに向いてない科目とか前年と比較して授業内容が激変した科目もあるだろうから一概には言えない。でも多くの授業で、前年よりも授業そのものに集中できるようになったと思う。他の学生が視界に入らなくなると予想以上に授業に集中できるのね。以前は大人数でがやがや喧しかった授業でも、オンラインでは講師の話す内容・講師によるスライドショーのみに意識を向けられるようになった。オンライン授業が開始してすぐ、zoomのチャット荒らしが湧いたらしいが、さすがに最近は見なくなった。あと、多くの授業で毎回のように課題が出るから必然的に復習するようになり、知識を定着させやすくなった。

 

Cons

1、クオリティが著しく低下した授業もあること

オンライン授業の形式は、大きく3タイプに分けられる。

(1)リアルタイム配信の講義型

(2)オンデマンド配信の講義型

(3)ウェブ上での課題提出型

このうち上の2タイプはあまり悪い話を聞かない。問題は課題提出型。このタイプの科目はピンキリだと感じる。レジュメやパワーポイントが用意されていてじっくり課題に向き合うものもあれば、「教科書〇〇ページを読んで感想を提出してください」みたいなものもある。「学費を返上しろ」という声が上がるのはおそらくこのタイプのせい。授業タイプごとの評価はまたあとで触れる。

 

2、大学の設備の利用不可

端的に言えば大学図書館を使えないのが厳しい。参考文献を片っ端から買う金は大学生にはない。レポート書くときは大変だ。Google Scholarだけじゃ参考文献に限界がある。レポート試験だらけの前期の期末、学生の阿鼻叫喚でTwitterのタイムラインが埋め尽くされる未来が見える。講師の皆様にはどうか温情でもってご評価賜りますようお願い申し上げます。

教職課程の人はスポーツ系科目の単位が必要なのに体育館とか使えない。理系学生は実験ができなくなったのかな。これらは感染対策だから大学が非難される筋合いはないけど、学生にとっての不利益であることは間違いない。

 

3、出会い不足

まわりに学生がいないから当然出会いがない。大学とは授業を受けるだけの場所ではなく、多くの人間と出会い対話する場所でもあるから、オンライン授業ではその点歯がゆい。サークルの新歓活動も制限されてるぶんなお一層新入生にとって厳しい大学初年度であろう。SNS等を通じてそこらへんは頑張るしかない。大学は出会いの場ではあるけど、出会いを提供する義務は大学にはないからね。

 

プロコンは以上。まとめると、気軽でストレスフリーな受講スタイルは気に入ってるけど、大学の設備が使えないところとか不利益だから学費をちょっと返してほしい、というところか。

 

学費返還問題

最近は少し鳴りを潜めた気もするが、学費返還要求が大学生を中心に起こっている。学費返還については、正直なんとも判断しにくいところがある。とりあえずそれに関する記事のリンクを貼っておく。

https://www.businessinsider.jp/post-211994

 記事の内容をざっくりまとめると、ICU国際基督教大学)が学生に送ったメールが取り上げられていて、学費返還を求める学生の事情と、返還に応じられない大学の事情が紹介されている。学長名による理路的な弁明が話題になっていたICUのメールは、目にした方も多いのではなかろうか。学長曰く、

Covid-19のために生じた問題にたいして、ICUは最善の対処を心がけています。施設費はそのための財政的な支えのひとつです。
こうしたことから、結論として、施設費の減額は現在のところ予定していないことをお伝えします。

とのこと。双方の言い分があってどちらも理解できる。探せばメールの全文も出てくると思うのでそちらを見てほしいが、どの大学もこの状況下で運営に苦心しているなかで、できる限り授業のクオリティ*1を保つように講師の皆さんが尽力されていることが伝わってくる。

あと、早稲田大学など学生に学費を一部返還した大学もあるが、それらの大学が努力を怠ったわけでは決してないことも書いておきます。現場は見たわけではないけど、大変なのは学生だけじゃないんだよな。

 

とはいえ、これを書いている私が実際に困窮学生なので書いておきたいこともあります。

生活が苦しい。

大学からのお知らせを欠かさずチェックしよう!

 

以上2点です。奨学金とか緊急支援金とかの締切が近いので必ず確認しましょう。大学に生き残るためには大事な情報を逃してはならない。

 

オンライン授業に対する評価(本題)

さて、オンライン授業3タイプのそれぞれの評価を書きます。これが主題のはずだったのに、ほかの話が随分と長くなってしまった。

 

(1)リアルタイム配信の講義型

もっとも対面授業に近い形式。講師の顔が見える安心感、講師の声が聞こえる安心感、同時に受講している学生がいることの安心感がある。

私の大学ではzoomを使用している授業が多いのだが、zoomにはチャット機能、ブレークアウトセッション、バーチャル背景など、便利な機能が多数搭載されているので不自由をあまり感じない。むしろチャットで質問する手軽さは対面授業を遥かに凌ぐ。

問題点は、回線の不安定さによって生じる音割れとか画面のブレとか。あと、私の大学では300人までが同時接続できる法人契約をしたらしいが、400人が履修している授業をzoomでやろうとしたせいで100人あぶれた。その件に関してはさっぱり同情できないし、私もあぶれた100人のうちの1人なので、ここで恨み節を吐く。

 

(2)オンデマンド配信の講義型

予備校気分が味わえる。講義動画をYouTubeで限定公開するものだと再生速度を速められるので、より一層の予備校感が漂う。一度でわからなかった箇所を何度も再生して理解できるのが強み。

講義を事前に収録するので学生からのリアルタイムの質問には答えられないが、前回の授業へのコメントを扱って解説していただけることもあり、そういう場合は対面授業と大差ないかもしれない。個人的にはリアルタイムよりオンデマンドのほうが複数回再生の点で高評価です。

あとは、時間の制約が弱いことをどうとらえるか。忘れっぽい人は講義の視聴と課題提出を失念するリスクが高いから気をつけてください。

 

(3)ウェブ上での課題提出型

ピンキリ。ベネッセ感? 赤ペン先生感? がある。

科目ごとにレジュメとかパワポの内容の濃さにバラツキがあって面白い。参考文献とかおすすめの書籍を見るたびに読んでみたくなる。全部読むわけにはいかないが。

このタイプも、オンデマンド型同様に時間的制約が弱いので、いろいろな可能性がある。本来は授業を受けるはずの時間を食事に充てたり、他の授業の予習・復習に充てたり、寝たりできる。

問題点は、課題が漠然としているときには手をつけにくいこと、課題がその都度採点されない授業では本当に理解できているか確証が持てないこと、大学じゃなくてよい感があることだ。通信制大学に(親が)金を払ってるわけじゃないんだぞ、って思うときもある。これも私の恨み節になるが、英語音声学の授業が期待外れだった。テクストを買って、付属のCDを聴きながら教科書を進めていき、毎回のテストの時間にウェブ上の選択問題に答える。¿大学の授業でやる意味はどこに?

 

その他

テクストを購入するサイトが用意されたものの、その発送が2週間くらい遅れたこと。私は緊急事態宣言発令前に、履修が確定する前に、池袋のジュンク堂書店で受講科目の参考図書を全部購入しておいた。そうでない学生は手元に教科書がないまま初回の授業を受けたみたいで、気の毒だと思った。

 

おすすめの本(余談)

なんとなく書きたくなった。飛ばしてくれて構わないが、新入生向けに2冊紹介しておきます。SuperReference 極度参考(にしなさい)。

 

小笠原喜康『最新版 大学生のためのレポート・論文術』(講談社現代新書、2018年)

この旧バージョンである『新版 大学生のためのレポート・論文術*2』を高校時代に読んでたいへんわかりやすかった覚えがある。書式、文献の集め方、レポートの書き方、パワポを使ったプレゼンの方法まで書いてあって大学生のためになる本。880円。お金を使うのが惜しい人は、立教大学の大学教育開発・支援センターが公開している『Master of Writing』、『Master of Presentation』を絶対に読みましょう。

 

 

石田英敬現代思想の教科書』(ちくま学芸文庫、2010年)

文系学部生たる者、「現代思想」というものがどのような地平なのかを簡単にでも知っておくことが肝要だ。この本は著者が放送大学で行っていた講義のテクストを編集したもので、1章あたりのページ数が少なくて読み進めやすい。思想書みたいな難儀なジャンルでは、とっつきやすさが入門書としての第一条件だと思う。この本だけでも記号論の誕生、「無意識」の発見、構造主義、エトセトラをおおまかに把握することができるのだが、巻末に読書案内まで用意されているスーパー親切設計。お値段1,430円と少々値は張るが、教科書としては破格の安さ。

 

現代思想の教科書 (ちくま学芸文庫)

現代思想の教科書 (ちくま学芸文庫)

  • 作者:石田 英敬
  • 発売日: 2010/05/10
  • メディア: 文庫
 

 

おわりに

結局何を書きたいのかあんまりまとめられない自分の力不足が悲しい。

初めてのオンライン授業で学生も大変だが、講師の皆さんも慣れない形式で授業してくださっていることは忘れてはいけない。

あと、学生はレポート試験のことを忘れてはいけない。ある程度の分量で、論理の通った文章を書く練習をしなくてはならない。

全体を通じて不格好な記事になったが、オンライン授業に関連する感情を殴り書きしたみたいな感じの文章のどこかしらで読者の感情と共鳴できていたなら嬉しい。

大学図書館が開かない限り参考文献を入手しにくいので、もし閉館されたままだったら期末レポートのハードルを下げてほしいです。ほんとうによろしくお願いいたします。

どうにかして前期を乗り越えて、いつか訪れるはずのキャンパス開放の暁にお会いできたら嬉しいです。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

*1:ここまで何度も「クオリティ」という単語を使ってきてしまったが、この定義は自分でもさっぱりわかっておらずかなり主観的なものになるのであまり議論には好ましくない気がする。

*2:ややこしいな。『英文解釈の技術』かこいつ。