横長本。
面白い歌や素敵な歌が多く、レイアウトもデザインもかなり洗練されていて、贅沢な本だと感じた。
特に印象に残った歌を、それぞれの作者から3首ずつ以下に引用。
郡司和斗「オリエンテーション」
同じ花火の写真を撮って私たち見返すことはない隅田川
まるで人生が一回しかないかのようにあなたは窓硝子を拭いていた
花束を受け取る人はいないけど花束係になれてうれしい
工藤吹「近況報告(RESIDENT/軽々)」
窓越しに別の車窓も越してみる東京の中学校や小学校
筆跡のなべて曲線 ここまでの遠出はひどく遠かったでしょう
こういうのが生気に触れるなのだろう廊下には木洩れ日が影を生む
篠原治哉「身体はうたう」
草や花を口に差し込む快楽はジャスミンティーに教えてもらう
ビニールがビニール傘になるまでに受けた悲しみはわからない
四季が好き 好きが高じて手を握る 霧の美術館は遠くても
平等に3首ずつ。
他にも素敵な歌がたくさんあったことは書き記しておきたい。
とりわけ、篠原さんの作品はポエジーが高いような感じがした。